はじめに
1940年前後まで進められていた積極的な鉄道網の建設は、第二次世界大戦の勃発とともに減速する傾向を見せはじめた。トルコ共和国が成立時(1923年)に有していた1378kmの幹線鉄道は、1941年にはすでに7009kmまで達しているが(ただし既存鉄道の買収を含む)、その後の延伸は緩やかであった。
1950年以降はトルコの交通政策が鉄道中心から道路中心に転換したことも大きな影響を与えた。新規の鉄道路線建設は範囲が限定され、幹線鉄道の延長は2000年においても8671kmに止まっている。
「共和国80年史における鉄道政策」では、トルコの交通政策を1950年を境とし、それ以前を「鉄道重視期」、それ以降を「道路重視期」として分類している。確かに新規路線の開業は少なくなり、鉄道の路線図が書き換えられる機会は減少した。
しかし、この時期においても鉄道が完全に放置されていたわけではない。本稿では1950年前後から1980年ごろまでの時期を中心に、推進されたプロジェクトとそれを取り巻く環境を考察してゆく。