はじめに
トルコ共和国が成立したのは1923年である。そして、ギリシャ、ブルガリアと接する現在の国境線は、共和国の成立に先立つローザンヌ条約(1923年7月)で確定されている。
以来、エディルネ(Edirne:かつてのアドリアノープル)の街は、ギリシャ、ブルガリアからの旅行者にとってトルコの入り口となった。トルコをアジアの国とするのなら、ヨーロッパからみたアジアの玄関口という言い方もできよう。現在は国道・高速道路が整備され、両国との間の交通はもっぱら自動車に頼っている。
しかし、20世紀の後半にいたるまで、これらの地域の移動手段として鉄道が果たしてきた役割は大きい。エディルネを通過する鉄道路線は、外国資本のオリエント鉄道(Şark Demiryolları)により1873年に完成している。
この時点ではイスタンブルからエディルネを経由しブルガリアまでの路線であったが、後に延長区間が完成しヨーロッパ各国と連結される。オリエント・エクスプレスのルートである。
現在の国境線はこの線路が完成した後に確定した。新しい国境線は、すでに完成していた線路の上にも引かれることになった。