エディルネ:国境と線路

バイパス路線の建設

ギリシャ領内を経由しない新路線が完成するのは、オリエント鉄道とトルコ共和国政府の間で合意が交わされてから半世紀近くを経た1971年であった(オリエント鉄道は1937年にトルコ共和国政府に買収されている)。完成時期は遅かったものの、このプロジェクトは思いのほか大規模である。

新たに建設された区間はペーリワンキョイ(Pehlivanköy)で既存の路線の北側に分岐する。ここからエディルネを経由し、ブルガリア国境のカプクレ(Kapıkule)に至る67.8kmにおよぶものであった。言うまでもなく、全区間がトルコ領のメリチ川左岸に建設されており、エディルネ駅はメリチ川右岸のカラアーチ地区から、左岸に建設された新路線上に移転している。

この新路線の建設に連携して、ブルガリア領内にも新路線が建設されている。カプクレのブルガリア-トルコ国境から、スヴィレングラード付近で既存の鉄道路線と合流するものだ。ブルガリア領での新路線と連結したことで、トルコからバルカン各地、さらにはヨーロッパ各地へ、ギリシャを経由しない鉄道連絡が可能になった。

一方、回廊区間の問題はギリシャ側でも発生していた。エディルネ付近でトルコ領を経由しなければ到達できない区間が生じていたのである。ギリシャ側ではエディルネ駅をバイパスする約10kmの路線を建設し、回廊区間の問題を解消している。こちらの建設時期は調査中だが、少なくともトルコ共和国の成立からすぐの時期に建設されたものではない。

バイパス路線

ギリシャ、トルコそれぞれの領内で完結するよう改められた。

赤線が新しく建設された路線である。ギリシャ側の新設路線はMultimapの地図がわかりやすい。中央やや上、「Karaağaç」の表記すぐ下の線路上に旧エディルネ駅があった。ギリシャ側ではこの区間を回避する新路線を建設している。メリチ川支流のアルダ川にかかる鉄橋は架け替えられた模様。

本稿とは直接関係ないが、ギリシャ側ではアレクサンドロポリからテッサロニキを連絡する路線も建設しており、自国内で孤立していた区間を解消している。